北欧諸国、中でもデンマークが「幸せな国」である理由。

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  2013年、幸せな国ランキング。今年もデンマークがトップとなりました。北欧諸国は国民の幸せ度が高いことで有名です。デンマークだけじゃありません。ノルウェー、スイス、オランダなど、幸せ度ランキングの上位には北 […]

 

2013年、幸せな国ランキング。今年もデンマークがトップとなりました。北欧諸国は国民の幸せ度が高いことで有名です。デンマークだけじゃありません。ノルウェー、スイス、オランダなど、幸せ度ランキングの上位には北欧が並びます。

一方、経済大国である日本は43位。

国の規模、経済、他の何の比較をしたところで海外に引けをとらないハズの日本が、どうして「幸せだ!」と胸をはって言うことができないのか。また「幸せだ」と言うことの出来る北欧の国々、特にデンマークにはいったい何があるのか。そのヒミツを、国の仕組み、考え方など、様々な角度から探ってみました。

 

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自由を与える教育制度

北欧のシステムから見ていきましょう。まずは教育についてです。

高校を卒業したらすぐに大学、大学に入ったらすぐに就職、というのが日本に置いての当然です。しかし北欧においては、異なる「当然」が存在しています。

ギャップイヤーをご存知でしょうか。ギャップイヤーとは高校から大学への入学するまでの期間、また、大学から大学院へいく合間など、教育の節目で取ることのできる自由期間です。ギャップイヤーの期間で、学生はアルバイトをしたり、留学をしたり、ボランティア活動をしたりと、自由に自分の将来において、学校では学べない体験と経験を手に入れるのです。中には中学を卒業した後に、1年ほど取る人もいるそうです。

将来について考える期間を、じっくりと取り、様々な体験をして、いったい自分がどの道に進みたいのかをしっかりと考えることが出来る。そこで答えを出し、ビジョンを持ちながら、将来に向けて歩んでいくことの出来る。理にかなった制度だと感じます。

 

競争よりも選択肢を広げる教育システム

デンマークには私立の学校がほとんどありません。だいたいが公立です。高校までは誰でも進学出来るように出来ています。中学校の成績をもって進学可能かどうかを決定し、もし成績が不十分であれば、1年多く通う、といった選択肢もあります。大学に関しては高校の成績を元に学習可能な分野が決定されます。基本的に大学入試制度はありません。

基本的に進学するのも就職するのも、タイミングは自由。学校を卒業したからといって、日本のように、一斉に就職活動をはじめることもないのです。

将来のビジョンが早々に固まる人もいれば、固まらない人もいる。それぞれの生き方は個人にゆだねられます。もしかしたら、早く将来のビジョンが固まった人よりも、じっくり考えだした人の方が結果を出すかもしれない。成功までの手順なんて誰にもわかりません。だからこそ、社会へ入ることを無理に早める必要はない。

もし、少し考えて「起業したい」なんて考える人が大発明をしたら? その幸福なステップを踏む為に、社会での経験よりも世界でボランティアをすることが大切だとしたら。

本人の希望さえあれば、1年、就職をするのを待ち、世界でボランティアをしてくることだって出来ます。本人の人生は本人の選択により、決められます。一定のタイミングや就職の時期なんてものも存在しません。

 

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週4勤務も可能 自由な就労環境

デンマークでは、自分のワークスタイルを自由に決めることが可能です。基本的に平日は5日あり、フルタイムで働かなければいけない、ということもありません。交渉次第で、自分のワークスタイルを決める権利が存在します。

例えば、副業をしたい、本を書きたい、自分の夢にチャレンジしたい、または、子育てや育児。人には職場以外の様々な状況が存在します。もし1週間の中で、副業がしたいと感じたら? もう少し自分のやりたいことに時間を裂きたいと感じたら? 提案して1週間に4日勤務に変えることもできます。このスタイルがデンマークでは普通のことだと言うから驚きです。

また、日本だと「副業」という概念さえあまり認められませんが、デンマークにおいては許されています。今の仕事に飽きたから、勤務日数を減らして次へのステップを形作る。そんなことも可能になるのです。それどころか、今の仕事では得られない経験や体験を身につけることが出来る分、歓迎される風潮もあるようです。

 

フレックスタイム導入も多く 仕事の配分も柔軟

ある職場の例です。

基本勤務時間が午前9時から午後5時までとします。毎日何時間ほど働いたかを毎日記録することで、例えば前日に夜遅くまで働いたから、次の日は早めに帰ろう、という調整も当然のように可能です。

逆に、自由度が高い分、働きすぎることもあるようですが、自己管理次第で自分のワークスタイルをスケジューリングしやすい点で言えば、それだけ会社に生活を縛られる、という概念は薄いのでしょう。日本でも、このような考え方の会社は増えてきていますね。

 

医療費や学費が無料 

これはご存知の方が多いかもしれません。北欧は税金が高いことで有名ですが、その代わりにしっかりとした社会保証制度があります。

例えば、何か学びたいと思って学校に行くとします。「フォルケホイスコーレ」という成人のための教育機関が存在し、比較的安い価格で教育を受けることができます。

また、何か怪我をしたとします。病院に行って治療をうける、もちろん無料です。入院して動けなくなった場合、収入は保証されます。子供が障害を持って動けなくなってしまった場合、介護で時間を取られてしまう両親の収入も保証されます。

なるべく格差をなくし、社会全体としての安定を築きあげていくこと。これが北欧の基本理念として存在しているのでしょう。

誰かが動けなくなってしまったら、その分、隣の動ける人がその人の命を担う。確かに、稼げば稼ぐほど税金は多くなりますが、その分自分が動けなくなってしまった時には社会が助けてくれる。基本的な生活を続けて行く上での安心感は途方もなく大きいものです。

 

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仕事をなくしても生きていける安心感

デンマークでは仕事をなくした場合、失業保険はもちろんですが失業保険に入っていなくても、「スタートヘルプ」というお金が支給されます。仮に明日クビになってしまったとしても、次の仕事を探すまでは国が生活の保証をしてくれるのです。

クビになったとしても、すぐに生活費が足りなくなったり、暮らせなくなったりすることはない。国からの保証で生きていける。だからこそ、一度クビにされたとしても何かを学び、学んだスキルをもって社会に再挑戦することが出来る。再挑戦するもでの特訓期間は社会が保証してくれる。その安心感が、より心の安定を生んでいるのでしょう。

 

年功序列や階段式の階級アップ概念は一切なし 

ただ、完全に実力主義がデンマークの社会です。仕事が出来ない人はすぐにクビになり、逆に課長が次は部長に、なんていうこともありません。

ある特定の地位が何かしらの理由で空いてしまったとしたら、会社は一般も含めて、その地位に適切な人を募集します。

会社に長く勤めていたとしても関係ありませんし、社内社外、年齢、性別、まったく関係はないのです。会社はそのポストに最も適した人が選べれば良い。だからこそ、ゼロから募集をかけるのです。今の日本社会とは逆の考え方とも言えます。

自分より年下の人が自分より上の地位にたったとしても、ひがむことはまずありません。

変化に応じてどんどん会社の形や仕事、スタイルを変化させていく。柔軟なワークスタイルを維持するのが国全体としての方向性なのです。このような柔軟性を手に入れられるのは、社会の保証がしっかりと行き届いている、という言葉につきるのでしょう。

 

まとめ なぜデンマークおよび北欧は幸せなのか 

様々な事柄について見てきましたが、これまで書き続けてきたことには共通点が存在します。

それは、社会が国民の生活をしっかりと保証してくれている、ということ。また、国民が教育から就職、ワークスタイルにいたるまで、全て自分自身の自由で道を決めやすい環境にある、ということです。

日本では、「お金がないから新しいこと勉強しづらい」「今の生活を支えるのがいっぱいいっぱいだから、退屈でもお金を稼ぐための仕事をこなさなくてはならない」のように、自己実現や自由獲得のためのハードルは高めです。言って見れば、個人の進路および希望をかなえる難易度が高い社会と言えます。

デンマークおよび北欧では確かに税金は高いかもしれません。大体収入の5割は税金です。

ただ、その分に見合った生活を社会が保証してくれる。もし何か学びたくなれば、仕事をやめて教育を受けることもできるし、不慮のトラブルで時間的、身体的に動けなくなってしまったとしても、国が最低限の生活を支えてくれる。

最低限、生きていけるという安心感、そして社会や教育を、いつでも、自由に、権利を酷使し、選択しながら「道を選びやすい」自由度が、国民の精神を安定させ、結果的に幸福度を押し上げているのではないでしょうか。

社会制度による自由と最低限の生活保証。また、これらの仕組みから得られる精神的な安定。

今すぐに日本社会に導入したからといってデンマークのように上手くはまる、ということはないのでしょう。ただ、今後の仕組みづくりにおいて、1つの参考になることは確かです。今回の結果には「人間の幸せとはなんなのか」という基本概念が潜んでいるのではないでしょうか。

 

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